「成功すればヒーロー、失敗してもチャレンジャー」電通マンのとっておきの口説き文句とは

「成功すればヒーロー、失敗してもチャレンジャー」電通マンのとっておきとは

電通

物事に対する見方のアングルを変えることによってアイデアが激しく飛躍したり、違った世界を見ることができます。そのちょっとした視点の違いを「アナザー・アングル」と名付けた電通・東畑幸多氏。日本が直面している課題の中にもアイデアのヒントがあり、イノベーションを生み出すきっかけになるのだと彼は語りました。(TEDxNagoyaU2014 より)

「その手があったか」と思う瞬間

東畑幸多氏:みなさんこんにちは。今日はCMの話ではなくて、アングル、視点の話を今日はしようと思います。

僕は広告クリエイターとして、アイデアを考える仕事をずっとやってきたんですね。で、ひとつ発見したことがあるんですけども、それっていうのは、人はすごい優れたアイデアに出会ったときに必ずある一言が心に浮かぶんです。

その一言っていうのはなんなのかっていうと「その手があったか」っていう一言が必ず心に浮かぶんですよ。

「なんでそれに気付かなかったんだろう」って。同じものを見ていたのに、なんでそれに気付かなかったんだろうって。優れたアイデアであればあるほど、そういう感覚に襲われるんですね。

その同じものを見ているのに、ちょっとした違いでアイデアが激しく飛躍するっていう、そのちょっとした視点の違いを「アナザー・アングル」といいます。

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これは僕が4日前名付けたばっかりで、このTEDで喋る用に名付けたんですけども、僕が考える「アナザー・アングル」ってことを獲得すると、例えば違った世界が見えてきたり、自分が違ったものに感じられたりとか新しいチャンスが見えてくるみたいな、そういう話を今日はしようと思います。

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広告業界で有名な理論があるんですけども「石切り場理論」っていうのがあるんですね。

それは、例えば石を切る仕事がある。黙って石を切らせてると、それはただの奴隷の労働みたいなかたちで、とっても苦しい作業になるんですけども、その石が教会になるっていうことを知ると石を切る意味が少し変わってくるんです。

さらに、教会に祈りに来る人をイマジネーションさせられると、それは同じ石を切るっていう行為が違う意味を持ってくるっていうことがあるんですね。

それがよく言われる「ビジョン」っていう言葉で表わされるんですけども、ビジョンっていうのも、実は視点を今まで見てなかったゴールっていう部分・景色を見せることで人の気持ちを変えるっていう力があるんですね。

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アングルを変えると見えてくる世界

現実世界でいうと、ディズニーランドあるじゃないですか? ディズニーランドっていうのはホスピタリティがものすごくあるところで、サービスもクオリティもものすごく高いですよね。

彼らはアルバイトのスタッフのことをキャストって呼んでるんです。彼らも、掃除をする人もアルバイトの人も、ミッキーも同じ全員出演者だと。

バックヤードの裏方ではなくて表に出る人なんだっていうことを、概念を与えることで彼らの仕事の意味、掃除の意味とかが変わってくるっていうことで、サービスのクオリティが上がったりするんです。

同じように、これはスティーブ・ジョブスの有名な言葉なんですけども、彼はAppleのエンジニアに対して「僕たちはエンジニアじゃなくてアーティストなんだ」っていう話をしてるんですね。

それは工業製品を作るのではなくて、我々は人のイマジネーションをかき立てて、世界を変える作品を作る集団なんだっていう規定を置くことで、イノベーティブな商品をいっぱい作ってきたと。

アングルを変える・視点が変わると見えてくる世界が、今まで同じものを見てたはずが、世界が変わって見えるんですね。

そうすると変わって見えたことで「人の行動のやり方が変わってくる」っていうことがあります。それがビジョンの力なんですけども、そういう概念っていうのは、昔の日本にも実はたくさんあったんですね。

ちょっといきなり「念仏」と書いたんですけども、これは「南無阿弥陀仏」っていうあの念仏のことなんですけども、この話をみうらじゅんさんの本『マイ仏教』で勉強したんで、正しいかはちょっと微妙なこともあるんですけども。

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念仏を唱えることの意味っていうのは、実は人生のものすごいつらい局面に立ったときに「そこがいいんじゃない?」ってむりやり言ってみる、声に出して言ってみるってことなんですね。

例えば人生思うようにいかない。でも「そこがいいんじゃない?」って言うと、確かにそんな気になってくるというか。命は永遠に続かない、でも「そこがいいんじゃない?」とか。

恋愛は思うようにいかない、でも「そこがいいんじゃない?」っていう。

そういうことを言ってみるっていうことに近いっていう話をしていて、ぜひこれみなさんも、何かつらいことがあったときに呟いてみると、声に出してみると少し脳味噌がだまされると思うんですけども。

これは念仏が生まれた時代背景っていうのが、とても飢饉があったり貧困があったり、病気があったり戦争があったりっていう、生きていく中でものすごい、とても苦しい時代背景があるんですね。

そんな中で、とはいえ現実を受け止めて前を向かなきゃいけない庶民の人たちが、生きる知恵として、ソリューションとしてこういう念仏っていうものを発明されたりですとか。

アングルを変えるヒントは課題の中にある

「わび・さび」っていうのも似たような概念なんですけども、千利休をきっと思い出すと思うんですけど、わび・さびも、例えば応仁の乱から戦国時代まで、ずーっと争いをしてた日本っていうのは荒廃しきってたわけなんですね。

そんな中で、物質的にものすごく貧しい時代っていうのが続いたんです。ある権力者以外は新しいものとか美しいものを手に入れられない時代が続いた中で、例えば古くなっていく・錆びていくものに対して美を見つけようとか、不完全なもの・欠けてるものを美しいと思おうっていう概念を提唱したんですね。

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それは物がないっていう時代の中で豊かに生きていくための生活の知恵であって、それもある種のソリューションなんですよね。

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アングルを変えるヒントっていうのは、実は必ず課題の中にあるんですよ。

課題の中にアイデアを考えるヒントがある。今の話を身近な例でたとえると、英会話教室を僕の友達がやってたんですね、ビジネスマン向けの。

とはいえ大手には料金体系って絶対かなわないので、彼がやったことっていうのは、日本に駐在する外国人の奥さんがやる日本語教室っていうのを始めたんですね。

それは英語というスキルを使うのは変わらないんですけども、視点を変えることで彼は新しいビジネスを生み出していたり。

旭山動物園っていうのも、北海道にある動物園でとても有名だと思うんですけども、かつてはすごく人が来なくて潰れかけたんですね。

その理由は2つあって、1個は人気。ヒーローの動物がいなかったっていうことと、もう1個は札幌から結構遠くて、いわゆる僻地にあった。

場所が良くなかったっていうことがあって、潰れそうになったと。その時彼らがとった行動っていうのは「行動展示」っていう新しい視点を動物園に入れたんですね。

行動展示っていうのは、普通動物園っていうのは檻があってその中に動物を入れてみんなで見るっていうのが動物園だったんですけど、彼らが作ったのは「動物の動きに合わした檻を作る」っていうことをしたんですね。

つまり、動物を見せるんじゃなくて動物の動く姿を見せる動物園っていうことを作って、トランスフォームしたんです。

動物っていうのはやっぱり動く物って書くんで、動いてる姿を見るほうが楽しいんですよね。それで今の大ヒットがあるんです。

これ実は、上野動物園にはできないソリューションになってるんですね。それは行動展示っていうものには、動物の動きに合わして檻を作るので、ものすごく広い土地がいるんですよね。

なので旭川っていうちょっと僻地にある、多分「土地だけはある」っていうことが実は地の利になって、ああいうソリューションが生まれてるっていう背景があります。

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課題っていうのは、アイデアだったりソリューションだったり、イマジネーションを生み出す原動力になるっていうことがあるんですね。

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「老眼鏡」を「リーディンググラス」と呼んでみよう

例えばなんですけど、老眼鏡。これはすごく僕大っ嫌いな名前で、僕も38歳でそろそろいつかはかける日が来るんですけども、かけた時ってやっぱりショックを受けると思うんですよね。

「老眼鏡かける歳になっちゃったよ」って。こういうのも例えば「リーディンググラス」と呼んでみようよと。

「読書するときのメガネなんだ」みたいに呼ぶと、かける人の気持ちが変わるはずなんですよ。

逆に言うと「え、まだリーディンググラス持ってないんだ?」って、何か知的なおしゃれアイテムになる可能性もあったりですとか。

例えば介護ベッドも、これも寝る人の気持ちを考えたときに、介護ベッドのお世話になるってやっぱり心理的につらい部分があるんですよね。だから「アシストベッド」って呼んでみようよとか。

僕は首にヘルニアがあって朝起きるのが結構つらいんですけども、例えば介護ベッドの起き上がる機能があったら、それはそれですごく便利だと思うんですね。

ああいった機能を介護って言わずに高機能なベッドとして売ったら、もしかしたらターゲットが広がるかもしれないとか、寝る人の気持ちが変わるかもしれない。

みたいなかたちで、アングルを変えるとかアイデアを考えるときのヒントっていうのは、課題の中に潜んでいるという。

もう1個、アングルを探すヒントなんですけど、それはものの良さっていうのは、必ず長所と短所でできてるんですね。光と闇の関係性で、人間っていうのは悪いところばっかり目につく生き物なんですよね。

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でも影があるっていうことは、その影をずーっと見続けた先には必ず光があるんですよ。逆転できる何かがあるんですね。

これは明治大学の齋藤教授(齋藤孝氏)っていう人が書いた本で、『日本人は、なぜ世界一押しが弱いのか?』てタイトルだったんですけども、ざっくり言うと日本人っていうのは、フィジカルが遺伝子的に最も弱い民族だみたいなことを書いているんですね。

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人類が生まれたアフリカで生まれた黒人のほうが一番フィジカルが強くて、次に白人の人。アジアの中でも中国と韓国の人が、日本人より平均身長とかすごく高いんですよ。

彼の仮説でいうと、争いごとが嫌いでフィジカルが弱かった人たちが、逃げて逃げて最後に行きついたのが東の島なんじゃないかって、ちょっと悲しい仮説なんですけども。

ただ、こないだのワールドカップの予選とかを見てると、確かにフィジカルの弱さっていうのはどうしても感じるんですよね。でもそのフィジカルの弱さもやっぱり強みに変えることができて。

今パリでは『超熟』っていうすごい柔らかいパンが大ヒットしてるんですよ。フランス人はフランスパンってものすごく硬いんですけど、日本人はあれはやっぱキツイってことで、すごい柔らかいものを作ったんですよね。

人間ってのはやっぱ易きに流れるところがあって、1回あのふわふわ感を堪能するともう戻れない人も結構出てくるんですよ。

ウォシュレットなんかも同じ発明で、あれはマドンナが来日するときに「ウォシュレットに会いに来た」っていうくらいファンもいたりするんですけども。

まぁお尻を洗うっていうのも画期的なんですけど、何がすごいっていうと「便座を温めよう」っていう、それはもう繊細なフィジカルの感覚を持ってないと、ああいう発想っていうのは思いつかないんですよね。

でも白人の方は便座を温めようなんて思ったことないと思うんですよ。でもイノベーションっていうのはテクノロジーから生まれるものなんですけど、日本はもちろんテクノロジーも強いんですけど、そういう人間の感覚、フィジカル。人間中心のイノベーションっていうのもあるんですよね。

それはパンを柔らかくするとか、ウォシュレットみたいなこともあるんですけど、そういう才能が日本人にはすごいあると思っています。

必ず短所の裏側は長所になるんですね。

課題こそ日本の資源

ここからが、僕は今日一番話したかったことなんですけど、僕、今日ここに来たのはみなさんの未来に対するアングルを変えてみたいなと思って、わざわざこの資料を用意したんです。

今未来っていうことを考えるときに、日本っていうのはやっぱりどうしても閉塞感があったり、漠然とした不安感があるんですよね。

「今日本に希望があるっていう人、ちょっと大丈夫か?」みたいな感じが僕もして、やっぱり直感的に今この国に未来があるなって言いづらいんですよね。

その原因っていうのは少子化、高齢化、エネルギーとかって課題が山積みなんですよ。

世界有数の課題先進国なんですね、日本というのは。

でも、これはまたチャンスと捉えることもやっぱりできて。ていうのは、今日本が直面してる課題っていうのは、必ずいつか世界が直面する課題なんですね。

世界の誰よりも先にその課題にトライアルできる、チャレンジできるっていうことは、実はすごいアドバンテージになる可能性があるんです。

環境問題の課題でトヨタ自動車のプリウスってハイブリッド車を作ったように、例えば誰も向き合ったことのない課題に向き合ったときに、日本の新しいアイデアとかソリューションとか、イノベーションが生まれてくるきっかけになる可能性があるっていうふうに僕は思っています。

課題こそ日本の資源だっていうふうに思ったほうがいいと思うんですよね。

さらに2020年のオリンピックが始まるんですよ。否応なく、6年後に日本っていうのは異常に世界から注目を受けるタイミングがやってくるんですね。

そのタイミングであらゆる課題に対するソリューションをプレゼンテーションできたら、日本の未来ってちょっと変わっていくと思うんですね。ソリューション先進国になる可能性も実はあるんです。

そのときに一番必要なものがあるんですけども、それっていうのが考える人ですね。

そして挑戦する人っていうのがいないと、この問題は解決していかないですね。

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「人と違うことを考える」「さあ、すぐやろう」の気持ちを持つ

僕がTEDにすごく期待してるのは、こんな日曜日にわざわざこんなプレゼンを聞きに来るっていうのは、Ustreamで見るとかサイトで見るっていう人は、やっぱ僕は意識がすごい高い人だと思ってるんですね。

そういう人たちに未来を作る側に行ってほしいなと思って、僕はコピーライターなんで、今日みなさんのためにスローガンを書いてきました。そのスローガンがこれです。

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「Think different. & JUST DO IT.」っていう。これは僕のコピーでもなんでもなくて「Think different」っていうのはAppleの有名なコピーで「JUST DO IT」はNIKEの有名なコピーなんですけども。

この2つを合わせた精神っていうのは、多分これからの日本にとってすごく大事だと思ってるんですね。

それは「人と違うことを考える」ってことと「さあ、すぐやろう」っていう2つの気持ちっていうのを持ってる人がどんだけ日本に増えるかっていうことが、これからの日本の未来を変えていくと思っていて、できればみなさんにこのスローガンが似合う人になってほしいなというふうに思っています。

ちょっとまた別のアングルのことを話したいんですけども、たまたま僕、TEDxNagoyaUのスタッフの方に、スピーカーの人は今日朝早い集合なんで「宿泊しますか?」って聞かれて、僕は「宿泊します」って答えたんですね。

前日に名古屋に入って、味噌カツを食べて友達と会おうっていうことでワクワクしてたんですけども、取っていただいたホテルが三河安城だったんですよ。1個手前の駅だった(笑)。

(会場笑)

「嘘だろ? じゃあ当日来るよ」みたいな、一瞬思ったんですけど、さすがにそれを一生懸命やってる学生にも言えなくて。

(会場笑)

でも人生のアングルを変えて見てみるっていうことが大事で、それは今日昨日でいえばすごく腹の立つ話だったんですけど(笑)、人生長い目で見たときに一生で三河安城に泊まる機会って1回かもしれないんですよ。

そんなことなかったら2度と泊まらないかもしれないんで、実はすごく貴重な夜かもしれないです。

成功すればヒーロー、失敗したらチャレンジャー

TEDのスピーカーも僕は上手くしゃべりたいと思うんですけど、失敗してもいいとやっぱり思ってるんですよね。

それは例えば10年後に「10年前の7月6日何してたかな?」って考えたときに、多分家にいたら思い出せないんですよね。

TEDにこうやってチャレンジしてれば、少なくとも自分の中に濃密に残る時間にはなるんですよ。記憶に残る時間に。

仮に失敗したとしても、すごい恥ずかしい思いは当日するんですけど、アフターパーティも出ないで帰ったりするかもしれないんですけど、でも10年20年、30年っていうスパンで見たときには、必ず忘れられない時間になってるんですね。

忘れられない時間に共通してることは1個あって、それは心が動いたときしか、人は記憶に残らないんですよ。

心が動くっていうのは、ドキドキするとかハラハラでもなんでもいいんですけど、それっていうのは、僕は「生きてる」ってこととほぼ同義語だなと思っていて。

そういう自分の中でずっと残っていく時間みたいなことを、例えば1日でも、1時間でも増やしていくっていうことを少し意識して生きてくってことも、とっても大事だなと思っています。

そのときに1つ重要なポイントがあるんですね。これはもう、みなさんスピーカーの方がみんな言ってたことなんですけど、例えば「ちょっと人に会うの面倒くさいな」とか「このイベント行くの面倒くさいな」とか「なんかちょっと会うと怖いからOB訪問行くのアレだな」みたいな、億劫になる瞬間ってあるんですけども。

そういうときにちょっとお腹に力を入れて、一歩踏み出すっていうことがとても大事なんですよね。

ちょっとしたことでいいんですけど「なんか今日イベントがあるけど、まぁ行かなくてもいっか」みたいなことってあると思うんですけど、でも思い切ってそこでちょっと力を入れて一歩踏み出すっていうことを、できるかできないかっていうことが結構人生を大きく左右すると思ってるんです。

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僕は何か迷ったときに、ちょっとお腹に力を入れて一歩踏み出せる勇気っていうのを、やっぱりみんなが持ったほうがいいと思ってるんですね。

最後に、僕がクライアントさんに結構無理なプロジェクトをプレゼンするときの口説き文句っていうのを、最後にみなさんに教えて終わりにしようと思います。

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それは「成功すれば、ヒーローになれます。でも失敗しても、チャレンジャーになれます」っていうことを言うんですね。

要は「一歩踏み出して損することは1個もないんです」っていうことをいつも言ってます。みなさんもぜひ、ちょっとしたことでいいんで、まず一歩踏み出すって勇気を持ってください。僕からのスピーチは以上になります。

 

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