億超えゾロゾロ「企業役員の報酬」はどう算出するか
報酬1億円以上の役員が411人!
円安による好業績を反映し、
1億円以上の役員報酬をもらっている人が過去最高となった
(東京商工リサーチ調査)
。2015年3月期決算の上場企業のうち、
役員報酬1億円以上を受け取った役員の
個別開示をしたのは211社、人数で411人。
開示が始まった6年目で会社数、人数ともに最高に達した。
特徴的なのは、報酬額10億円以上が過去最多の5人
(前年度4人)になったこと。
[ad#co-1]54億7000万円:オリックス 宮内義彦元代表執行役会長
21億7600万円:三共(SANKYO)毒島秀行代表取締役会長
17億9100万円:ソフトバンク ロナルド・フィッシャー取締役
12億円:岡三証券グループ 加藤精一代表取締役会長
10億3500万円:日産自動車
カルロス・ゴーン代表取締役会長兼社長、最高経営責任者
また、1億円以上開示企業のうち三菱電機が
過去最多の23人(前年度18人)に上った。
続いてファナック11人(同10人)、
伊藤忠商事9人(同6人)、
野村ホールディングス、トヨタ自動車、
三菱重工業が各8人と続く。
三菱電機に関しては、執行役23人全員が1億円以上。
柵山正樹社長の2億6000万円が最も高いが、
ほとんどが1億3000万円前後で並んでいる。
ただ、1億円以上もらっている
役員が過去最高になったといっても、
欧米企業に比べて低すぎると指摘されており、
金額だけを見て高すぎると言うつもりはない。
問題は、どうしてその金額になるのかという算定方法だ。
[ad#co-1]以前の役員報酬はその金額はもとより、
どのように決まっているのか、
社員にもわからない“伏魔殿”と言われたものだ。
会社に長く務めた会長や相談役に法外な
退職慰労金が支給されたことを報道で
初めて知るという社員も多かった。
一方、従業員の給与は1990年代後半以降、
年功賃金から成果主義賃金制度への移行が進み、
目標達成度による評価など賃金決定の透明化が推進された。
それと並行して役員の報酬制度も退職慰労金の
廃止など一時的に改革が進んだが、
算定方法などの開示は決して十分とは言えない。
これが、偉い人たちの「報酬」の内訳
役員の報酬は、主に
・固定報酬
・賞与
・役員退職慰労金
の3つで構成される。
その内訳は有価証券報告書に記載されているが、
算定方法については明確になっていない。
[ad#co-1]内閣府令では、報酬額1億円以上の役員名以外に
「報酬額の算定方法の決定方針がある場合は
その内容および決定方法」の開示を義務づけている。
素直に読むと、役員報酬の決定に関する方針がない場合は、
その内容や決定方法も記載する必要がないとも解釈できる。
常識的に考えれば固定報酬1本であっても
、役職や勤続年数で決まっていれば
「決定方針や決定方法がある」ことになる。
ところが、実際は具体的な報酬ポリシーを
記載していないところが多い。
たとえば1億円以上の役員が多い三菱電機とファナックだ。
三菱電機は固定、賞与、退任慰労金の
「報酬等の決定に関する方針」を記載している。
だが、ファナックは「該当事項はありません」との一言だけだ。
ファナックの稲葉善治社長は報酬ランキング
17位の4億8600万円。
内訳は基本報酬1億7700万円、賞与3億900万円。
開示されたのは金額で、賞与が固定賞与なのか、
あるいは業績連動賞与なのか。
[ad#co-1]どういう基準で支払われているのかさっぱりわからない。
三菱電機も執行役の賞与については
「業績連動報酬については連結業績及び各執行役の
担当事業の業績等を勘案して決定し」
と記載されているが、具体性に欠ける。
連結業績といっても、経常利益なのか
営業利益を指標にしているかもわからない。
一方、算定方法が明確な企業もある。
たとえばある大手企業の役員の業績連動賞与は、
会社業績と個人業績結果で決まる。
会社業績分は営業利益200億円を基準に1000万円を支給する。
この場合の支給係数を100%として計算し、
営業利益300億円で120%、400億円で150%と増える仕組みだ。
逆に200億円を下回ると下がることになる。
本来であれば三菱電機も具体的な算定式まで
記載してほしいところだ。
それが、多くの同社社員の思いであり、
世間の考えかもしれない。
たとえば、カゴメは「連結経常利益率」
を指標にしていると記載している。
報酬の決定方針や決定方法の記載が企業によって
バラバラでは株主はもとより、
社員の納得も得られないのではないか。
[ad#co-1]「日本の経営者は、欧米以上の報酬」
経営環境の変化が激しい中で、
経営者はあえてリスクを取る覚悟が求められている
。業績連動報酬というインセンティブを与えることで
挑戦を促す効果があるとされている。
しかし、成功してもそれに見合った報酬が少なく、
逆に失敗しても減俸などのペナルティだけですむならば、
ハイリスク・ハイリターンの事業より、
ローリスク・ローリターンの事業を選択する可能性が高い。
そもそも日本の経営者は欧米企業に
比べて本当に報酬が低いのかという疑問がある。
年収だけを比較すれば日本の数億円に対して、
米国企業では10億円以上もらっている
経営者が多いかもしれない。
しかし、米国企業の雇われ経営者は
業績が悪化すれば4~5年でリタイアする人も多い。
それに対して日本のサラリーマン社長は
少々の失敗でも退任しないどころか、
社長を退いても、会長、相談役、顧問となり、
長期にわたって(あるいは死ぬまで)
報酬をもらい続ける例も珍しくない。
トータルの報酬は米国企業の経営者と
比べて見劣りするどころか、多くなる可能性もある。
日本企業の管理職の賃金制度は
近年、役割・職務給制度を導入する企業が増えている。
1年間の成績が悪ければ、
その役割の任にあらずということで
降格・減給処分を受けることもある。
[ad#co-1]役員の報酬制度の透明化や
年功的制度に切り込むことをしないで、
社員の業績主義を徹底させるのは、どう考えてもおかしい。
それが、会社を支える平社員たちの思いに違いない。
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