総崩れしたコモディティー相場 原油、銅、アルミなどが金融危機以来の安値、中国ショックだけじゃない
コモディティー(商品)価格は先の金融危機以来の安値水準
まで落ち込み、少なくとも1つの指標では、
今世紀の最安値を記録している。
天然資源セクターは中国の成長鈍化に対する不安に
巻き込まれたが、個々のコモディティーには、
まだ独自の市場力学がある。
何が起きているのか、以下に簡単なガイドをまとめた。
■原油■
石油の過剰供給が当面続く兆しが強まったことから、
トレーダーと投資家が落ち着きを失っている。
しかし、本質的な不安を広げているのは中国だ。
中国はこの10年間、他のどの国よりも石油需要の
伸びに大きく貢献してきた。
このため、中国経済のいかなる減速も原油消費にとって
凶報を意味する。
また、米国のシェールオイル産業は予想以上に
抵抗力を示してきた。石油輸出国機構(OPEC)
に加盟していない他の産油国の生産量も同様だ。
一方、サウジアラビアとイラクのようなOPEC加盟国は、
過去最高に近いペースで石油を産出している。
9月に差し掛かかろうとしている今、
石油業界は石油精製施設のメンテナンスに目を光らせている。
秋季の数カ月には、季節的な補修や改修作業が石油需要を
押し下げる傾向があるからだ。
BMIリサーチのアナリストたちは、
原油安に対するヘッジファンドの賭けの急増が
「ここ数週間、ブレント原油とWTI
(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油
の双方に大きな下落圧力をかけた」と指摘。
2014年6月に始まった原油価格の暴落は「まだ続く」
と話している。
[ad#co-1]需要は今年の年初から上向いたものの、
これまでのところ追加供給量を吸収するまでには至っていない。
アナリストらは、今年下半期の余剰生産が
日量200万バレルに達すると推測している。
「この数週間、マクロ経済の状況が悪化していることから、
市場はリバランス(再均衡)するために需要の改善だけ
に頼るわけにはいかない」
ロンドンを拠点とするコンサルティング会社
エナジー・アスペクツのアナリストらはこう話す。
さらに、原油価格が反騰を演じるためには、
「すべての産油国から意味のある供給反応」
が示されることが必要だと付け加えた。
■銅■
中国における今年の銅需要の伸びは2~3%程度で、
多くのアナリストの当初予測より鈍い。
この需要の変化を見込んで、中国のヘッジファンドは1月に
銅価格を急激に押し下げた。今月、配線から電力ケーブルまで
何にでも使われる銅は6年ぶりの安値を記録した。
アナリストらは、7月に精製銅の輸入が2%伸びるなど、
中国における現物取引はかなり活発だと話しているが、
需要全体は依然として比較的弱い。
[ad#co-1]銅の生産者であり商社でもあるグレンコアは先週、
銅の在庫は過去最低水準にあり、ヘッジファンドが市場を
押し下げたと主張した。
「普通は在庫が少なければ価格は高いものだ」
と、アイバン・グラゼンバーグ最高経営責任者(CEO)
は語った。
しかし、多くのトレーダーは中国のインフラ投資の減速、
特に電力産業(銅の消費量が最も多い産業の1つ)
の投資減速を引き合いに出す。
銅は生産原価より低い価格で取引されており
、豪マッコーリー・グループは、現在の価格では約17%の
鉱山が赤字を出していると見ている。
これが鉱山の減産につながり、やがては価格を押し上げる
可能性がある。
長期的には、古い生産活動に取って代わる新しい
大規模鉱山が少ないとアナリストらは指摘する。
銅生産で世界最大手のチリの銅公社コデルコは、
現在の生産量を維持するためだけに数十億ドルの投資
を行っている。
■アルミニウム■
アルミニウム価格は今年、中国からの大量の輸出に襲われ、
6年ぶりの安値で取引されている。
しかし、中国のアルミニウム企業がアルミを輸出する動機が
ほぼ間違いなく減ったとはいえ、どの企業も減産したがらない
ことから、アルミニウム市場はまだ過剰供給が続いている。
アルミニウム協会によると、今年上半期に世界の
アルミニウム供給は10.3%以上増加した。
コンサルティング企業CRUによると、
中国では、閉鎖もあったが、多くの製錬所が生産能力を
高めており、西部の新疆自治区のアルミニウム生産は
7月に36.5%増加したという。
[ad#co-1]アナリストらは、中国が「顧客から競争相手へ」
と変貌を遂げるにつれて、拡大する中国の生産量が
西側の生産者を廃業に追い込むと予想している。
「中国で建設された(そして今も建設されてる)
莫大な過剰生産能力を考えると、アルミニウムの行く手は
非常に辛い道のりになると感じている」。
英金融企業インベステックはこう語る。
「中国の新しいアルミニウム製錬所は最先端を行っており、
生産原価が非常に低い。だから、これが今後数年で、
『西側』の生産設備の大規模廃業につながると見ている」
■鉄鉱石■
鉄鉱石価格はこの2カ月、ベースメタル(卑金属)より
健闘しており、7月初旬に最安値を記録してから約25%
反騰した。
1トン当たり56ドルまで価格が回復したのは、
ブラジルとオーストラリアからの輸出が減少したためだ。
だが、データ提供企業スチール・インデックスによると、
供給が引き続き需要を上回っていることから、
鉄鉱石価格はまだ年初より22%安いという。
中国で売買されている鉄鉱石の先物は8月24日に4%下落した
。取引所のルールで定められた1日の値幅制限いっぱいの下げだ。
総体的にコストが高い鉱山はプレッシャーを感じているが、
世界最大級の鉱業会社は生産を減らす兆しを見せていない。
鉱業大手リオ・ティントは今年、中国向けの鉄鉱石販売を
昨年比で2割増やす計画だと先週述べた。
[ad#co-1]■金■
金は今月、米連邦準備理事会(FRB)が9月の利上げを
見送るとの期待感の高まりから恩恵を受けた。
さらに、世界の株式市場が総崩れとなる中、
現金の避難先を探す投資家にも後押しされ、金は今月、
6%上昇している。
しかし金は24日、一定の圧力にさらされた。
一部の投資家が他の市場でのマージンコール(証拠金請求)
に応じるために保有している金を現金化したからだ。
「コモディティー全般が大幅安に見舞われたにもかかわらず、
金はかなり持ち堪えている」とコメルツ銀行のアナリストら
は言う。
「とはいえ、リスク回避の急激な高まりと顕著なドル安にも
かかわらず、金はそれ以上上昇することができなかった」
アナリストらの話では、金の買い手は主に西側、米国で、
伝統的に金需要の中心地であるインドや中国ではない。
これは金の価格が米ドルと、FRBから発せられるサインに
大きく左右される可能性が高いことを意味している。
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