最盛期のガンホー彷彿させるミクシィの株価
先週木曜日に2015年第1四半期(4-6月)
決算を発表したミクシィ <2121> 。
その内容は、売上高が前年同期の約3.9倍の500億円、
営業利益は同5.2倍の243億円。
市場コンセンサスの「営業利益210億円」
を上回った今回の決算、文句なしの好決算だった。
実際、13日引け後の決算発表後、
好決算に即座に反応した玄人肌の投資家は、
SBIジャパンネクストのPTS(私設取引)
を利用して5690円(13日東証終値5240円)で買う人までいた。
参加者が少ないPTSで素早く仕込み、
翌日の東京時間でより高く売り抜けようという狙いである。
しかし……PTSで付けた5690円は“幻の高値”となった。
発表翌日の14日、前日比2%強の上昇となる5380円
で寄り付いた後に急失速。
結局、終日では同2%安の5130円での着地になった。
さらに週明け17日は下げ加速状態で、
前週末比8%安の4715円で取引終了。
「文句なしの好決算→2営業日で株価1割下落」
という、投資家が最初に抱いた想像とは
反する方向へ大きな振れとなった。
決算発表に合わせるかのように、
「ミクシィが中国のIT企業、
テンセントとの業務提携の解消で同国市場から撤退する」
とも伝わっていた。
一部で、「海外での成長に期待していただけにネガティブ」
なる市場関係者の声などが流れていたが、
これはまったく違う。
[ad#co-1]言葉の壁以上に文化の違いがあり、
日本のSNSゲーム(以下:ソシャゲ)が
海外で大成しないことは誰もがわかっている。
中国からの撤退はむしろポジティブであり、
ヘッジファンドも世界一ゲームに課金する
日本人相手の動向だけに目を光らせているはずだ。
「文句なしの好決算→2営業日で株価1割下落」。
ここで今回、最も投資家が意識したのは先駆者、
ガンホー・オンライン・エンタテイメント <3765>
の姿ではないだろうか。
ガンホーが「パズドラ」の大ヒットで
四半期ベースの過去最高売上高を叩き出したのは、
2014年1~3月期。
1年半ほど前の話だが、同四半期のミクシィの売上高は
48億円足らずにすぎなかった。
今の10分の1以下だ。
このパズドラ最盛期に向けて当時、
ソシャゲで一発当てたいゲームパブリッシャーは、
ガンホーが敷いた道(パズドラのゲーム性)
をたどるようなアプリを次々と作っていった。
ジャンルは違えど、そのなかで成功したのが
コロプラ <3668> であり、ミクシィだったといえる。
ミクシィの第1四半期好決算の理由に、
「エヴァンゲリオン」とのコラボイベントを
開催したことによる課金増があった。
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これも、2年前にガンホーが実施したイベントそのものである。
8月2日に幕張メッセで開催した
「モンストフェスティバル2015」。
炎天下にもかかわらず約3万4500人も集まったようだが、
これもガンホーが毎年開いている
「ガンホーフェスティバル」が参考になっているのだろう。
モンストのアニメ化もされるようだが、
これもパズドラが先行していた。
ガンホーは「ソシャゲ界の野茂さん」
今、海を越えて日本人プロ野球選手がMLB
(以下、メジャー)で活躍している。
扉を開いたのは、20年前にメジャーへ渡った
野茂英雄さんである。
野茂さんに対して、
現在活躍する日本人メジャーリーガーは敬意を表し、
野球ファンの誰もが敬意を表している。
ガンホーは「ソシャゲ界の野茂さん」かも知れない。
ガンホーの14年1~3月期ピーク時の売上高は499.09億円だった。
一世を風靡した「パズドラ」の
四半期売上高のピークが約500億円。
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これが非常に強いベンチマークになっているのは
間違いないだろう。
今回、ミクシィが想像以上の好決算で
四半期売上高500億円に到達。
“パズドラ越え”なんて表現されていたが、
逆にその後のガンホーの株価が
奮わなくなった姿を重ね合わせ、
“引き際”を意識する投資家も少なくなかったはずだ。
ガンホーの株価は最近冴えないが、
今回、投資家がソシャゲ界の野茂さんである
ガンホーに敬意を表していたとすれば
目頭が熱くなる話ではないだろうか。
ひとまず、四半期売上500億円達成をきっかけに、
「成熟期入り」が意識されてきたミクシィ。
その時価総額は4000億円強で、
これはガンホーとほぼ同水準である。
市場では、数年来続いた
「ソシャゲ株買い、老舗ゲーム株売り」
のアンワインド(巻き戻し)のような値動きとなっており、
足元で任天堂 <7974> 、カプコン <9697> 、
コナミ <9766> といった老舗の株価が年初来高値圏にある。
壮大な資金のUターンが起きているようだが、
「アプリ1発当てて四半期売上高500億円」
を次に達成する会社も現行のソシャゲ株
の中から出てくる可能性が高いだろう。
株価が動かなくなった「ソシャゲ界の野茂さん」
であるガンホー。業績モメンタムは落ちているとはいえ、
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業界トップの限界利益率を維持しながら、
気付けば内部留保(利益剰余金)
は1000億円を超えているのだが……。
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