TED アップルが成功した理由 “ビジョン”を考えることの重要性

TED アップルが成功した理由 “ビジョン”を考えることの重要性

[ad#co-1] サイモンシネック

 

サイモン・シネック氏が見出した優れたリーダーや組織が持つ共通項について、わかりやすく説いたプレゼンテーションです。アップル、マーチン・ルーサー・キング、ライト兄弟などを例に、「ビジョン」から会社やプロジェクトを始めることの大切さを熱弁しています。プロジェクトや会社を成功させたい人の大いなるヒントとなるはず!

「ものすごい功績」にはどんな要因があるのか?

サイモン・シネック氏(以下、シネック):思った通りに事が進まないとき、皆さんはそれをどう解釈しますか? 逆にものすごい功績を誰かが成し遂げた時、皆さんは何を思うでしょうか?

例えば、どうしてアップルはこんなに成功したのか? 彼らは常に進化し続け、競合から常に抜きん出ています。しかし、アップルはいちコンピューター会社です。他社となんら変わりはありません。これはつまり、人材、代理店、コンサルタント、そしてメディアへアクセスするチャンスは他社にもアップルにも平等に与えられているという意味です。それではなぜアップルが他社から抜きん出でているのでしょうか?

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なぜマーティン・ルーサー・キングは市民権運動を統率することが出来たのでしょうか? 当時の情勢に苦しんでいたのは彼だけではありません。皆を行動に移すために演説をしていたのも彼だけではありません。なぜある特定の人がリーダーとなるのでしょうか?

より資金力もある優秀なチームが飛行機をつくろうと試行錯誤する中で、なぜライト兄弟は、最初に人類が飛行することを実現できたのでしょうか? 他者より秀でる何かが生まれる時、資金力やその他リソースへのアクセスよりも他の要因があるのではないでしょうか?

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優れたリーダーや組織には共通項があることを発見した

シネック:3年半ほど前、私はある事実を発見しました。そしてこれが、私の世界のものの考え方を根本から変えました。そして私の物事へのアプローチの仕方も変わりました。何を発見したかというと、「物事にはパターンがある」ということです。

アップル、キング牧師、そしてライト兄弟などを筆頭とする世界のあらゆる優れたリーダーや組織には、共通するものの考え方や行動の仕方、そしてコミュニケーションのパターンがあったのです。そして彼らのやり方は、一般の人のやり方とは真逆でした。

私はそれを公式にしてみましたが、とってもシンプルでした。これをゴールデンサークルと呼ぶことにしました。「なぜ?」「どうやって?」「何を?」。この3つに視点を当てて、ある一部の組織やリーダーがなぜ他者より優れた結果を生み出すのかを説明します。

「お金を稼ぐため」は「なぜ」の答えになりません。

シネック:まずはこの3つ、「なぜ?」「どうやって?」「何を?」について説明します。この世のどんな人も、どんな組織も、自分が「何を」しているのか100%理解しています。そしてある人々は「どうやるか」まで理解しています。いわゆる、自分と他者を差別化する能力や価値を知っているということです。

しかし、「なぜ」自分はそれをやらなくてはいけないのかを理解している人や組織は非常に少ないのです。「収入を、利益を得るためさ!」は「なぜ」の答えに値しません。利益は優れたことを成し遂げた後の結果にすぎません。つまり目的意識の話をしているのです。自分のやることにどんな意味があるのか? 何を信じて行動するのか? なぜ皆さんの属する組織は存在しているのか? 皆さんが毎朝起きて仕事をする理由は何なのか? どうしてそれが大切なのか?

一般に、私達は「何を?」「どうやって?」「なぜ?」の順に考え、行動し、コミュニケーションを取ります。当たり前ですよね。「何を」するかはわかりきっています、しかし「なぜ?」と問われれば言葉に詰まる。

「何を」ではなく、「なぜ」を示したときに人は動く

シネック:しかし、優れたリーダーや組織は逆です。「なぜ?」「どうやって?」「何を?」の順に考え、行動し、コミュニケーションを取ります。これは組織の大きさや業界を問いません。

例えば、私がアップル製品を購入し利用するのは、使い勝手がよく、簡単に操作できるからです。もしアップルが「普通」の会社であれば、こんな具合の謳い文句を使うでしょう、「私達は素晴らしいコンピューターをつくっています。ファッショナブルなデザイン、操作はシンプルでユーザーフレンドリー。どうですか?」「要りません」と。

こんな風に「普通」の会社は市場にマーケティングアプローチを取り、売り込もうとします。一般に人と人とのコミュニケーションも同じように「何を」「どうやって」「なぜ」の順であることが多いです。

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私達は何ができるのか、どう違うのか、またはどこが他より優れているのかを述べた後、それに対する周囲のリアクション、例えば購買や投票など、周囲が行動を起こしてくれることを期待します。

「新しく法律事務所を設立しました。より優りの弁護士ばかりを集め、大手クライアントばかりを抱えています。クライアントにとって最も良い結果をもたらすために最大の努力を惜しみません」。「新型自動車を開発しました。低燃費、シートはレザーです。おひとついかがですか?」。でも、こんな具合ではあまり心は動きませんよね。

アップルはここが違うのです。「私達は世界を変えられると信じています。そして常に既存の考え方とは違う考え方をします。世界を変えるために美しいデザインかつ機能性に優れた製品を世に送り出そうと努力するうちに、このような製品ができあがりました。おひとついかがでしょうか?」。どうですか、購買意欲が湧きませんか?

情報の順番を変えただけですが、まったく違いますよね? こうして人はアップル製品を購入するようになるのです。「なぜ」を示したときに人は動くのです。「何を」ではありません。

これが、皆さんがアップル製品を購入するのに何の疑いも持つことがない理由です。さらに私達はアップルからiPod、iPhone、そしてDVRも購入していますね。しかし、アップルは他のコンピューター会社となんら変わりはないのです。競合とアップルを隔てる仕組みに違いはありません。競合会社もアップルと同じような製品をつくる資源や人材を揃えています。実際に数社がアップルに挑んだこともあります。

デルの失敗とアップルの成功は生物学的に証明される

シネック:数年前、ゲートウェイ社がフラットスクリーンテレビを売り出しました。もちろん彼らには技術がありました、フラットモニターを何年にも渡り製造してきたのですから。しかし、まったく売れませんでした。

デルは素晴らしいクオリティでデザイン性溢れるMP3プレイヤーとPDAを売り出しました。しかしそれも売れませんでした。デルのMP3プレイヤーなんて想像できますか? コンピューター会社からMP3を買うなんて、なんだかおかしな気がしませんか?

しかし、アップルのiPodは別ですよね。これが人は「なぜ」に動かされるということの良い例です。「何を」ではありません。人に「もの」を提供するのではなく、ビジョンに共感してくれる人を増やすことがゴールです。面白いことに、今皆さんにお話していることは私自身の意見ではないのです。これは生物学的に証明されている事実なのです。心理学ではありませんよ、生物学です。

「直感」も「心」も「魂」もすべて脳内、大脳辺緑系に存在する

シネック:ヒトの脳の断面図を上から見ると、ゴールデンサークルと全く同じように3つのパートに分かれていることがわかります。ホモサピエンスというヒト科の最も進化した形態の脳に見られる脳の外側部分、大脳新皮質は、ゴールデンサークルの一番外側の「何を?」のレベルに相当します。大脳新皮質は、私達の合理的かつ分析的思考と言語を司ります。

真ん中の2つの部分は、私達の自律神経機関、情緒、信頼、忠誠心などの感情を司る部分です。そしてさらに人の行動、意思決定をコントロールしますが、言語能力はこの部分の担当ではありません。つまり、私達が 「何を?」「どうやって?」「なぜ?」という風にコミュニケーションを取る時、他者は機能や利点、数値等の複雑な情報を理解することができます。しかし、理解できたとしてもそれが行動に繋がるわけではないのです。

「なぜ?」「どうやって?」「何を?」という風にコミュニケーションを取る時、私達は行動をコントロールする脳の真ん中に直接働きかけることになるのです。行動を司る部分に働きかけられる、すると人は自分の行動を合理的に後から考えることになるのです。いわゆる直感力というのはこうして生まれます。

こんなことはありませんか? 皆さんは様々な数値的根拠に基づいて物事を説明することができる。しかし思うのです、「根拠はわかったけど、なんだかこの決定には納得できない」。どうしてこのように「感じる」のでしょうか? それはつまり、脳内の意思決定を行う部分は、言語を司らないからなのです。なので「なんだかこの決定には納得できない」と「感じる」けれどもその感情を説明することができない。

または、「心に従え」だとか「魂の声を聞け」などとよく言いませんか? でも実際に考えてみれば「心」や「魂」はすべて脳内に存在します。皆さんの大脳辺緑系に、です。ここが皆さんの意思決定をコントロールします。しかし言語は担当外です。

人々は「なぜ?」に反応する、と私は言いました。つまり私達が、なぜ私達の仕事をするのか、真の意味で理解していないとすれば、一体どうやって選挙で投票を皆から獲得したり、製品を買ってもらったりするのでしょうか? どうやって人を説得することなどできるでしょう? さらに重要なのは、皆さんの信念やビジョンに人々の共感を呼ぶことです。

販売も採用も「ビジョンのシェア」が本当のゴールだ

シネック:もう一度言います。その製品を必要とする人に売ることがゴールではありません。皆さんのビジョンを一緒に信じてくれる人に売ることがゴールです。同様に、ビジョンをシェアできる優秀な人材を雇うべきなのです。仕事が必要だから、という理由で働く人を雇うことはゴールではありません。

いつも言うのですが、もし「ただ仕事をこなせるから」という理由で人を雇うと、彼らはお金のために働きます。しかし、ビジョンをシェアできる人を雇うと、彼らはビジョンを達成するために汗水流して一生懸命に働きます。

ライト兄弟がその具体的な例です。サミュエル・ピェールポント・ラングレーについてどれくらいの方がご存知でしょうか? 20世紀初頭、人類飛行の夢は現代の「.com」ブームのようなものでした。皆が飛行の夢を追っていました。サミュエル・ピェールポント・ラングレーは成功するために必要であろうと、私達が思うものすべてを兼ね揃えていました。

資金難のライト兄弟が飛行機を飛ばせた理由

シネック:例えば、「どうしてあなた達の製品は売れなかったんでしょうか?」「どうしてあなたの会社は失敗したのでしょうか?」と聞けば答えはきっとこうでしょう。「資金が足りなかったんだ」「雇う人を間違えた」「景気が悪い」、と大概この3つでしょうね。

この3つを踏まえた上で、サミュエル・ピェールポント・ラングレーの話をしましょう。彼は、陸軍省から5万ドルの資金を与えられて、とにかく飛行技術を開発するように依頼されていました。つまり、「資金が足りなかったんだ」という言い訳はできません。彼はハーバード大学に在籍、スミソニアン博物館勤務、そして人脈がものすごく広かったのです。彼は当時の著名人誰とも知り合いでした。

景気が絶好調だった当時、彼は金に物を言わせて飛行技術開発のためにエキスパートを集めます。ニューヨークタイムズはラングレーの動向を追いまわし、皆が彼に期待をかけていました。当時のこの盛況ぶりを思うと、なぜラングレーの存在が現代の私達の間では知られていないのか、と思うでしょう?

同じ頃、数百マイルも離れたオハイオ州、デイトンにオーヴィルとウィルバー・ライト兄弟は住んでいました。彼らはラングレーとは真逆でした。まず、ライト兄弟にはお金がまったくありませんでした。自分達が自転車店経営で稼いだお金を夢につぎ込みました。次に、彼らには教育もありませんでした。ライト兄弟のチーム内、誰ひとり大学を出た人はいませんでした。もちろんニューヨークタイムズは彼らの存在など知りもしません。

ラングレーと違う最も重要なポイントは、ライト兄弟は彼らのビジョンや夢に突き動かされていたという点です。もしも人類飛行の夢を叶えることができれば、世界を変える事になるのだとライト兄弟は信じていました。

「結果」を求めたラングレーは飛行機をすぐ諦めた

シネック:反対に、ラングレーは金と権力、名声を手にしたかったのです。彼は「金持ちになる」という「結果」を求めました。結果、ライト兄弟のために働くチームはライト兄弟とビジョンをシェアし、汗水流して一生懸命に働いたのと対照的に、ラングレーのチームは皆ただ金を得るためだけに働きました。

ライト兄弟は言っています。飛行テストをする時には必ず5セット準備したと。何故なら夕食に戻るまでに必ず5回は失敗するからと。1903年12月17日のことです。ついに彼らは空を飛びます。しかし、その場に居合わせたのはライト兄弟だけでした。数日後、彼らの成功が世に知れ渡ります。

ラングレーが私欲で動いていたことの証明に、彼はライト兄弟が空を飛んだことを知った日にプロジェクトを辞めました。ラングレーはこうも言えたはずです、「ライト兄弟は素晴らしいことを成し遂げた! よくやったな! さらなる追求のために手を貸そうじゃないか!」。しかし一番最初に功績を残せず、富も名誉も得られなかったため、ラングレーは辞めてしまったのです。

 

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アーリーアダプターを獲得するのは、それほど難しいことではない

シネック:人は他者の夢やビジョンを称えるものです。他者が「何を」提供してくれるかではありません。つまり私達が常に夢やビジョンについて語り続ければ、それに共感してくれる人が増えていくでしょう。しかし、なぜ夢やビジョンに共感してくれる人を増やすことが大切なのだとお思いですか?

「イノベーションの普及の法則」というものがあります。法則は知らなくても、言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか? この世の中の2.5%が「イノべ—ター」と呼ばれる人々です。次に13.5%が「アーリーアダプター」です。次に34%は「アーリーマジョリティー」で、あと「マジョリティー」「ラガート」と続きます。ラガートに属する人達がタッチパネルの携帯電話を使っている理由は1つ。もうプッシュ式携帯電話が普及していないからです。

(会場笑)

私達は皆この数値上、様々な地点にいるわけなのですが、「イノベーション普及の法則」が示すのは、市場確保をするためには15%から18%の市場に浸透しなければならない。つまりそれが限界点であるということです。

「あなたの新しいビジネスのコンバージョンはどれくらいですか?」とよく聞きます。「10%くらいかな?」と皆誇らしげに答えてくれます。10%ほどの顧客を得る事は、それほど難しいことではありません。アーリーアダプターがそれくらいの割合で存在しているのですから。

彼らは「何もしなくても買ってくれる」のです。直観に似たようなものですね、「ただ、買ってくれるのです」。問題はこうです。「なにもせずともただ買ってくれる人」と「働きかけなければ買ってくれない人達」をどのように見つけだすか。

長時間並んでもiPhoneを入手したがる人がいる理由

シネック:この小さなギャップをどのように埋めるかが課題です。ジェフリー・ムーアが言っています、「キャズムを超えろ」と。なぜなら、アーリーマジョリティーは誰かが先に行動を起こしてくれなければ行動に移せないからです。

イノべ—ターとアーリーアダプターは自分の直観で行動を起こせる人達です。彼らは例え入手困難な製品だとしても、自分の直観がイエスと言えば購入する人々です。彼らが、iPhoneが最初に出た時に6時間待ってでもiPhoneを入手しようとした人達です。翌週お店に行けば、長時間待たずともすぐに購入できたにも関わらずです。最初にフラットスクリーンが世に出た時に、400万円払ってそれを購入したのが彼らです。当時まだ、未熟な性能であったにも関わらず、です。

彼らがこのように行動するのはテクノロジーが素晴らしいからではありません。彼ら自身のために購入するのです。彼らは、最新のものをいち早く手に入れたいという願望から行動しています。

人は「何を」を買うのではありません。「なぜ」が重要なのであり、人の行動はその人の信念を写す鏡であるということです。逆に言えば、人はその人の信念を世に示すために行動します。最初のiPhoneを彼らが6時間待ってでも手に入れたかったのは、皆に彼らが最初のiPhoneを手に入れたことを示すためです。人は「何を」ではなく「なぜ?」を重要視するのだという良い例でした。

「なぜ」にフォーカスせずに失敗したTiVo

シネック:さて、ここで有名な例をご紹介したいと思います。「イノベーションの普及の法則」の有名な失敗と成功の例です。

まず、有名な失敗例からご紹介します。商業的な例です。「資金」と「賢い人選」そして「良い市場状態」が、成功のために一般に必要であると信じられている3つの要素であるとお話しました。これら3つがあれば皆さんは成功することができます。

TiVoを例に取ります。今から8、9年前にTiVoが発売されました。今日この日まで彼らは市場で唯一の高性能高品質製品でした。資金繰りも極めて良好、市場も彼らに好意的な流れでした。TiVoは動詞になりましたね。「私あの番組TiVoしてる」のような感じに。しかし、TiVoは商業的には失敗です。利益が増えなかったのです。

TiVoが株式公開した時、彼らの株価は30、40ドルが平均でした。それから株価は急落し以降10ドルを超えることはありません。むしろ6ドルを超えていないような気がします、数回の上昇を除いて。TiVoが製品を発表した時、彼らは彼らが「何を」実現するのかをすべて発表しました。

「放送中のテレビ番組を一時停止することができて、CMを飛ばせる、巻き戻しができる、そして好きそうな番組を勝手に録画しておいてくれる、そんな製品を開発しました」と彼らは言いました。「本当にそんなことが出来るのか? そんなものは要らない。気に入らないね。なんだか怖いな」と人は疑いました。

もしもそのとき、このように発表していたらどうだったでしょうか、「自分の人生を自分の手でコントロールしたい、そんなあなたにぴったりの製品を開発しました。あなたが今見ている生放送中の番組を一時停止したり、CMを飛ばしたり、好きな番組を勝手に録画してくれる……」。

人は「何を」ではなく「なぜ」にお金を払うのです。そしてあなたがどう行動するかはあなたの信念を写す鏡に過ぎません。

 

25万人は「自分のために」キング牧師のスピーチに集まった

シネック:次に「イノベーションの普及の法則」成功例を見てみましょう。

1963年夏、25万人もの人がキング牧師のスピーチを聞くため、ワシントンに集まりました。招待状など送られませんでした。もちろんウェブサイトもありません。どうやってこんなに多くの人々がその日、その時間、その場所に集まることができたのでしょうか? 当時、他にも精力的に活動する演説家は存在しました。当時のアメリカで苦しんでいたのは彼だけではありません。キング牧師のスピーチはいつも素晴らしかったわけではありません。

しかし、彼は皆とは違うものを持っていた。彼は、何をすべきかを説くのではなく、彼が想うこと、彼のビジョンや夢を語ったのです。「私は信じている」と彼は夢と信念を語りました。そして彼の夢と信念を聞いた人々はそれに共感し、彼らの周囲にも伝えて周ったのです。中にはキング牧師の夢に共感する心から、彼のビジョンを伝えるための組織を設立した人もいました。そして25万人が、あの日ワシントンに集まりました。彼のスピーチを聞くために。

キング牧師のために集まった人数は……ゼロです。そこに集まった人々は自分のために集まったのです。キング牧師のためではなく、彼らのアメリカに対する夢やビジョンのために、8時間もバスに揺られることも厭わず、炎天下の中での立ちっぱなしも厭わずにキング牧師の話を聞きにやってきたのです。黒人と白人間の戦いではありません。集まった人々の25%は白人でした。

キング牧師は信じていました。この世界には2種類のルールがあると。1つは神がつくるルール、もうひとつは人間がつくるルールです。そして人間がつくったルールがすべて神がつくったルールに合致するまで、この世は公平にならないと。市民権運動は、彼の人生の目的を果たすための重要な追い風となりました。人々は、彼のためではなく、自分自身のために彼についていったのです。その中で、「私には夢がある」と演説したのです。「私には計画がある」ではありません。

(会場笑)

政治家を例にとってもそうです。12項目にまとめた今後のプランをみても、なんだか心が動かされないですよね? つまり「リーダー」と「人を先導出来る人」は異なるということです。リーダーとは社会的地位と権力を持つ人。一方、人を先導出来る人とは私達の心を動かす人です。それが個人でも組織でも、私達は先導者に続きます。しかし、そうしなければいけないわけではありません。そうしたいからです。そして私達が先導者に続くのは先導者のためではなく、私達自身のためにです。先導者になれるのは、「なぜ?」から物事を始めることができる人。そしてまた彼らは、彼らの心を動かす他の先導者を見つけることも得意です。

ありがとうございました。

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